おせち料理とは
お節句の料理を「お節」と言う風習がありましたが、のちに最大の節句である正月の祝い料理を刺すようになったと言われています。
地方によって風習は違いますが、共通しているのは、
■日もちがするように、しっかりとした味付け
■縁起を担いだ料理食材を用いること
■お重(重箱1~7段)に入れて出す
もっとも、お重に入れるのが一般的になったのは、明治以降のことらしいのですが、コンパクトで持ち運びが利くので、今でもそのようになっています。
世界中を見回しても、お重に詰めるのは日本ぐらいのもの。
日本独特の、世界に誇れる食文化だと思います。
重箱に入れる縁起物のお料理
おせち料理はあくまでも新年のお祝いのごちそうです。
縁起担ぎのできる食材を入れて、その年がつつがなく幸せに過ごせるように願います。
重箱にも「めでたさを重ねる」という意味があり、できれば二段三段と用意をしたいものです。
重箱の内容の基本は決まっています。
一の重
一の重は縁起重です。
縁起の良い食材を使ったオードブル的なお重になります。
例えば、こんな感じです
数の子 | ニシン(二親)の子。卵の数が多く、子孫繁栄を願って入れます。 |
黒豆 | 日焼けでまっ黒くなるくらいに、マメに働く。邪気を防ぎ健康を願う |
伊達巻 | 巻物に似ているので、学問成就や、教養が備わるように |
かまぼこ | 半円形が、日の出や年神を表し、その年の縁起を担ぐ |
田作り | 五穀豊穣。片口イワシが肥料として豊作を呼んだことから。 |
栗きんとん | きんとんは金団と書き、財産や富を得て豊かに過ごすように。 |
ユリ根 | 球根が幾重にも重なり、団結や和に通じる |
昆布巻き | ヨロコブのごろ合わせ |
たたきごぼう | 深く根付くごぼうなので、家の土台がしっかりとするように |
一の重は、縁起物を詰める習わしなので、良く働き、豊作になり、財を成し、子孫繁栄を導くといった願いが込められているのですね。
お酒を始めたらまずはオードブルの一の重をつまむという感じでしょうか。
二の重
二の重の中身は、全体として3段なのか5段なのかによって違ってきます。
昨今は、5段重があまり見られなくなったので、一般的な3段で考えてみます。
二の重には、海の幸の焼き物と、酢の物が入ります。
一の重がオードブル的なものだったのに対し、二の重はメインディッシュが入る感じです。
では、海の幸の縁起担ぎ状況を見てみましょう。
鯛 | おなじみ、めでたいのごろ合わせ。おせち以外のお祝いにも欠かせません。 |
エビ | 腰が曲がるまで長寿でいる願い |
アワビ | アワビは、身が長く伸び、永遠や発展という意味があります。 |
うなぎ | うなぎのぼりという言葉があり、出世や発展をイメージします。 |
ブリ | 成長とともに呼び名が変わる出世魚であることから |
タコ | タコは多幸と書き、多くの幸せが来るように |
ハマグリ | 夫婦円満。対になっている殻以外とはぴったり形が合わないから。 |
トコブシ | 別名をフクダメといい、福を貯めるということから |
それぞれにごろ合わせや縁起担ぎがあって、面白いですね。
取り合わせの酢の物にはこんなものが
紅白なます | 人参と大根が紅白の水引に似て、おめでたい |
菊花カブ | 菊は長寿を意味し、長生きを願う |
酢蓮 | レンコンの穴から、見通しを良くするように |
三の重
三の重は煮しめが入ります。
主婦は年中休みがないので、正月ぐらいは休めるように「作り置きの保存食」の意味がありました。
冷蔵庫がない昔は、しっかりとした味をつけて煮締めることで、保存をしたのですね。
煮締めるお野菜などの具にも、縁起担ぎの要素がありますよ。
竹の子 | 天に向かってぐんぐんと伸びるので、子どもの健やかな成長や出世を願って。 |
人参 | 色がおめでたく、梅型に抜いてますます縁起よく |
干し椎茸 | 乾物は神様やご先祖様へのお供えにも使われます。入れると出汁がよく出ます |
手綱蒟蒻 | 心を引き締め、己を戒める。縁結びの意味もあります。 |
レンコン | まっすぐの穴から先が見通せるように。酢蓮と似ていますね。 |
ごぼう | まっすぐ大地に根を下ろすという意味です。 |
里いも | ひとつの種いもから子いもが増えるので子孫繁栄の意味を込めます。 |
高野豆腐 | 大豆は魔除けの食材。特に高野豆腐はその形や硬さから「盾豆腐」と呼ばれ、災いをよける意味 |
絹さや | 天に向かって伸びる竹の葉をイメージ。彩りが鮮やかになります。 |
伝統を守って作られたおせち
今では、見た目が派手で豪華でインスタ映えするようなおせちが多く、重箱単位のお料理を守っているおせちはほとんどありません。
一の重にはど~んと伊勢海老やローストビーフ、三の重にも生ものなんていうのが普通ではないでしょうか。
家族皆がおせちをいただいて幸せな気持ちになればよいので、しきたり云々はあまりこだわりすぎるのもと思います。
古来の詰め方をしているおせちを参考にご紹介します。
古来の詰め方
「栗鹿ノ子」が絶品として有名な、長野の老舗「小布施堂」のおせちをご覧ください。
小布施堂本店の食事処では、土地の伝統的な野菜を生かした和食が人気です。そんな名店のおせちは、古きよき伝統を受け継ぎながら作られています。
お重の内容を見てみます。
【壱の重】・・・オードブル的な縁起重
1 からすみ/2 黒豆/3 数の子/4 田作り/5 おせち鹿ノ子/6 ひたし豆/7 たたき牛蒡/8 花豆/9 金冠
【弐の重】・・・メインディッシュ(海の幸の焼き物と、酢の物)
1 鰤のつけ焼き・松風焼き/2 鮭の西京焼き・はじかみ生姜/3 〆さごし・炒めなます/4 竜皮巻き・海老の黄金焼き
【参の重】・・・煮しめ
1 織部椎茸/2 くわい/3 昆布巻き/4 蓮根/5 人参・絹さや/6 玉蒟蒻/7 牛蒡/8 牛肉味噌焼き/9 里芋
見事に重箱単位の料理が守られています。
一の重は縁起物のオードブル。
二の重は焼き物のメインディッシュと酢の物
三の重は煮しめ
美味しそうですね。
縁起を体に注入って感じで、お祝いの料理にふさわしいです。
ご自宅でお重に詰める場合も、少し意識して詰めると良いと思います。
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